日本文化のひとつ「着物」。
日本の子どもたちの多くは人生の節目に着物を着る機会があるのではないでしょうか。
例えば、七五三や成人式などです。
しかし、ひとり親家庭の子どもたちの中には人生の節目に着物を着る機会がなく、一度も着物に袖を通したことがないまま大人になる子も少なくありません。
「着物を着せてあげたかった…」と心を痛める親御さんもいると思います。
また、お子さんの中には「着物を着て成人式に出席したかったけれど、親にこれ以上負担をかけたくない…」との思いから、成人式には出席しないという子もいます。
そんな親と子の切ない願いをほんの少しでも手助けしてあげられたら…との思いから、初まった「着物着付け会」も今年で2回目となりました。
一般財団法人 民族衣裳文化普及協会 岐阜支部の着付け講師の方5名、学校法人 岐阜美容学園 岐阜美容専門学校の先生と生徒さん10名、全日本写真連盟 岐阜支部のアマチュアカメラマンさん1名に全面協力いただき、昨年の倍の世帯の8家族、総勢21名の方が参加してくださいました。
初めての着物と着物に合わせたヘアメイク、晴れ姿での家族写真の撮影に、驚きや笑顔があふれる会となりました。
会場がどんな様子だったのか、ご紹介しますね。
「着物を着る」=「初体験」プラス「家族の思い出」
着物の準備および着物の着付けにご協力いただいたのは、昨年同様、一般財団法人 民族衣裳文化普及協会 岐阜支部の着付け講師の皆様でした。
背丈や好み、一緒に撮影する家族とのバランスを見ながら,講師の方々が着物選びのお手伝いをする姿を見て「流石…プロは違うなぁ」と思わず関心。
着物を着たことがないという親御さんも多く、緊張した表情で受付されていた方も着物を目の前にすると「うぁ…、キレイ」と少しずつ表情もにこやかになっていきました。
着付けだけではなく、撮影時にも”より着物姿がキレイに見えるように”と、手の置き方や小物の持ち方などに至るまで撮影現場でレクチャーしてくださいました。
参加された方の多くが、着物姿のご自身を鏡でご覧になった時に、パッと表情が明るくなっていました!
参加者にとって「着物を着る」こと自体がいい体験となったかと思いますが、それ以上に家族との写真撮影を通して、新たな家族の思い出ができたのではないか…と思いました。
「ヘアメイクで笑顔になってほしい…」
~美容学校の学生さんの想い~
今回から新たに岐阜美容学園 岐阜美容専門学校の先生と生徒さんが加わっていただき、着物に合わせたヘアメイクを担当してくださいました。
学生さんはヘアメイクをするにあたり、事前に送られた参加者の顔写真を元に、ヘアスタイルやメイクのイメージを考え、練習までして臨んでくれたとのこと!
着物に合わせたヘアメイクは、髪の長さや年齢によって変える必要があり、また、当日着る着物に合わせた髪飾りを付けるために、さまざまな飾りを用意して下さいました。
ヘアメイクが初めてのお子さんがほとんどで、そんんなお子さんの緊張をほぐすために「このスプレーでカッコよくしてもいい?」「好きな色は?」など、声をかけながらその子が望むヘアスタイルを聞き出しスタイルを決めていく学生さん…。
出来上がったヘアメイクを鏡で見せ「どう?」と聞く学生さんに対して「...凄い。うぁ…凄い」と鏡の前で何度も髪型を確認するお子さんの姿に、こちらも感動しました。
参加者が出来上がりを鏡で笑顔になるたびに、着付けの先生や学生さんたちも笑顔に…
そんなあたたかな空間がそこにはありました。
「孫の着物姿を一目見たくて…」
参加者の中に、小さな女の子とそのお母さんの親子がいました。受付をすまし、着付けの順番を待っている親子のもとに年配の女性が合流。
お声をかけると「今日、孫が着物を着ると聞いて、どうしても見たくて…」と話してくださいました。
着付けが終わって、ヘアメイクするタイミングで「良かったら中でお孫さんの様子を見ませんか?」と再びお声がけしました。「え、え?良いんですか?」驚きながら嬉しそうな表情をされました。
撮影場所にも一緒にご案内し、ご自身のスマホでも写真を撮っていらしたので「良かったら、3人で撮影されせんか?」とお声がけしました。
撮影が終わると「うん、うん。ホントに良かった!可愛いね~。うんうん。」とお孫さんと娘さんの姿を何度もご覧になり、そんな姿に娘さん(お母さん)も少しうつむきながら「うん、来てくれてありがとう」と話していました。
みんなの想いが満たされた「着物着付け会」
「着物の着付けを通して、着物の魅力を伝えたい」「日本文化を多くの方に継承したい」
「学校で学んだヘアメイクで笑顔になってほしい」「その人の魅力を引き出したい」
「趣味の写真撮影で誰かがこんなにも喜んでくれるなんて、自分も嬉しいし楽しい」
「経済的に余数がなくて成人式や七五三で着物を着せてあげられなかったけど、着せてあげられた…」
「晴れ姿を親や祖父母に見せてあげられた!」
それぞれの想いが全て満たされた会だったのではないか…と、参加者や協力してくださった方々を見ていて感じました。
また、さまざまな家族の絆や想いに触れ、私自身も心が満たされたような気がしました。
ライター 渡邉久美子(撮影・文)
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